家族皆で食事をしたあと娘が、
「なんとかマキアートつくったけど飲む?」と誘ってくれた。
それとともに、棚の上にあった頂き物の美味しそうなお菓子がテーブルにならび、その、なんとかマキアートが届いたときぼくはキャンドルに火を灯した。
それならとばかり、お部屋の灯りを暗くしてみたら、
いつものリビングがちょっとだけ洗練された場所に感じてきて、
キャンドルを囲む時間の中に、いつも当たり前に居る家族とは違うものが見えた。
そう、それは思い違いでも、かげろうでもない。
明るいときには見えないものがキャンドルの薄灯りにあぶり出されるように現れ揺れた。
とても近しい家族でも届かないことが沢山ある。
相手の気持ちを感じながら、自分を話し始めるのは近しいからこそ照れくささや恥ずかしさがあるのも事実。
しかしそれは、もしかしたら、灯りを暗くすることで、こぼすことができるのかもしれない。
心少し動き、小さな炎のゆれる灯りの向こうにだけ、本当が語れるのかもしれない。
その夜、リビングライトが再び灯くことはなかった。
一通り嗜んで、皆が立ち上がったあと、ぼくはキャンドルの灯りを、ふっ、と消してその日が終わった。